ハカセ桜(第1回)
私、福岡伸一と、とある一本の桜にまつわる新連載コラムです。第1回では、京都での助教授時代の思い出からお話します。当初は福岡ハカセの<トポス/ロゴス/ピュシス>の一環としてアップしたのですが、今後長くお付き合いいただく話題になりそうなので、独立したシリーズに変更しました。
福岡 伸一
2026.05.29
読者限定
「宇治のハカセ桜」プロジェクト(前編)
今からもう四半世紀以上も昔、1999年4月、この年の7の月に世界は滅亡するといわれていた頃(ノストラダムスの大予言を覚えている方ももう少ないかもしれませんが)、私は一本のごく細い桜の苗木を植えました。39歳の春のことです。場所は、京都府宇治市の黄檗(おうばく)駅から少し歩いた小高い丘の上。周囲には、名刹(めいさつ)黄檗山・萬福寺の境内や山林が広がるのどかな場所です。ここに京都大学国際交流会館おうばく分館という施設がありました。これは世界各国から京都大学に留学してきた学生ための寮施設で、当時、京大の助教授として研究生活を送っていた私に、この寮の住み込み寮長さんを兼業してほしいとの依頼があったのです。