福岡伸一セレクション vol.4
少し間が空いてしまいましたが、セレクション第四弾です。福岡生命論の核心、「動的平衡」について語ります。
福岡 伸一
2026.03.31
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砂上の楼閣(サンド・キャッスル)
遠浅の海辺。砂浜が緩やかな弓形に広がる。海を渡ってくる風が強い。空が海に溶け、海が陸地に接する場所には、生命の謎を解く何らかの破片が散逸しているような気がする。だから私たちの夢想もしばしばここからたゆたい、ここへ還る。
ちょうど波が寄せてはかえす接線ぎりぎりの位置に、砂で作られた、緻密な構造を持つその城はある。ときに波は、深く掌を伸ばして城壁の足元に達し、石組みを模した砂粒を奪い去る。吹きつける海風は、城の望楼の表面の乾いた砂を、薄く、しかし絶え間なく削り取っていく。ところが奇妙なことに、時間が経過しても城は姿を変えてはいない。同じ形を保ったままじっとそこにある。いや、正確に言えば、姿を変えていないように見えるだけなのだ。